今回は声優志望と言っている人に向けてお話しいたします。
まずあなたは声優という仕事はどういう仕事だと思っていますか?
この質問に対して
「アニメのキャラに声をあてる仕事ですよね?」
という風に答えてしまった人はこれから書いていくことを読んでみてください。
アニメのキャラに声をあてる仕事?
アニメのキャラクターに声をあてる仕事でも間違いではないんですが、
厳密に言うと声優という仕事はアニメだけではないですよね?
そしてやはりアニメに声を当てている声優さんを見て声優になろうという風に思っている人も多いと思います。
はじめはそういうきっかけから声優を目指したいというのでもいいんですけれども、
この思考がずっと変わらず、
「アニメ声優としてやっていきたい!」「アニメしかやりたくない!」
というふうに思っているだけでは、ちょっと考え方が違うのかなと思います。
まず声優という職業は「声でしか」演技を表現できない非常に難しい職種であるということが言えます。
なのでまずは基礎的なものとして表現力と演技力が必要なんです。
これが基本であり基礎が欠落していると表現に乏しい演技となってしまいます。
演技の基礎もできてない状態で表現力に対しても特に深く作りこんでいない、
アニメだけを見て「あ、なんかアニメ声優っていいなぁ」
というような感覚で声優を目指しているとその基本が出来上がらなくなってしまいます。
一方、劇団などの俳優さんはマイク前のような声優としてでなく、声や体を使って表現力や演技力を磨いています。
その俳優さんの人生経験を演技の引き出しにして、演技の哲学や美学を追求しています。
役を作る上での掘り下げもしっかり作れることによって、非常に味のある、深い演技をすることにつながっています。
これは声優も同じです。
アニメキャラに声を当てるのも、実際に動きをつけてセリフを言ったり、
何かのキャラクターを演じるのも、そこに表現されているものは人間です。
だから、何かを演じるということは人間らしい感情を
どれだけ自分の引き出しに入れてそれを表現していくことができるのかが、
あなたの商品価値となり、財産になっていくのです。
声優の仕事はモノマネではない
声優志望ですという風に言っている人でも、
発声の基本が出来てなかったり、体作りをしていない人がいたりします。
そういった地道な努力やきつい練習は嫌がるんですよね。
その代わり、何かのアニメのキャラクターのモノマネや有名な声優さんのモノマネは、
めちゃめちゃ練習をしていたりするんです。
どうしてだろうか?
これって演技をする・声優としてお仕事をもらう以前に、
何を目指しているのか分からないし、演じる上で何が大切なのかを考えていない人が本当に多いです。
こういったことをやっていると、
「モノマネ芸人にでもなりたいの?」
と言われてしまいます。
(※私も養成所時代こういうことを言われた経験があります)
現在開催しているワークショップでも、そういったお話をしていたりもするのですが、
そういったことを理解せずに好きな声優さんの声マネをして変なクセがついてしまったりする人も見てきました。
これは本当にもったいないです。
声優になれるかという以前に、そもそも考え方が間違っています。
ちゃんと演技の勉強をして絶対にプロの声優になってやると決めて、真剣に取り組んでいる人って本当に少ないです。
そういった状態ですから声優としてのお仕事がもらえる方向にも行かず、しっかり鍛錬をして行動している人がいない。
その状況で業界に行ったとしても、それに対しての力量がないのであれば、
キャスティングされないということです。
制作サイドもお仕事はたくさんあるし、新人の声優も使いたいと思っているはずです。
ですが、そのニーズに応えられるものを持ち合わせていなければお呼びもかかりません。
私もプロの現場で音響監督さんから言われたことがあります。
「下手な声優を起用したら自分の仕事の評価が下がる。だから手抜きはできない。それこそ仕事も来なくなってしまう。」
声優もそうであるように監督さんもこういったプレッシャーがある中で、
作品に起用できる声優さんを慎重にキャスティングをしているんですね。
「昔に比べて、この声優さんといえばこの声だ!」
みたいな、非常にインパクトがある声を持っている声優さんがそこまでいなくなったように思います。
どちらかと言うと、同じようなアニメ声を出している声優さんが増えたような印象があります。
もちろんこれは時代によって変わっていくものだとも思いますが、
これが演技の低下につながることにならなければと懸念してます。
今の声優はアイドル性を求められたりもしますので、一概に声優としての活動だけではなく、
いろんなことをやらないと残っていくことが出来なくなってきました。
だからある時は声優、ある時は歌手、ある時はダンサー、ある時は舞台役者。
みたいな感じで、何でもできるようなエンターテイナーになっていかないと厳しくなってきました。
外国映画の吹き替えをやりたい人っている?
ここで冒頭で書きました本題に戻りますが、今の声優志望の人達で
アニメではなく外国映画やドラマの吹き替えをやりたい、
もしくはそれも選択肢として考えている人はどのくらいいるんでしょうか?
おそらく極少数になると思います。
そのため映画やドラマの吹き替えは、舞台をやっている人の方が多いです。
舞台俳優をやっている人は演技力がありますから、こういったお仕事は非常にマッチしています。
ただ、映画やドラマの吹き替えは、アニメと比べると非常に地味なので、
声優志望という人は、この仕事をやりたいという風に思う人は少ないのかもしれません。
私自身が入った養成所からのつながりが外国映画の吹き替えがメインのところでしたので、
外国映画の吹き替えのお仕事をもらっていたことがありますが、
アニメと比べるとこちらの方が非常にやりやすいです。
タイムコードもありますし、映像でどんな演技をしているかわかるし、
ヘッドセットからも英語でどんなふうに演じているのかもわかりますのでヒントが多いです。
またシリーズものもあるので一度役が決まってしまえばそれだけ継続性もありますので、
声優をやっていく上で安定した仕事を受け持つことができるようになります。
声優の仕事は簡単と安易に考えない
声優として有名になってめちゃめちゃ稼ぎたいと思っているならば、
「声優なら自分でもできそうだ!」
というふうに安易に考えてしまわないことです。
いままで書いてきたことを踏まえて、
本当にあなたが声優を目指す覚悟があるのかを自問自答してみてください。
またアニメ声優の方が吹き替えをやっている声優よりもかっこいい。
というようにアニメの方に偏重して優劣をつけてしまっていたとしたら考えなおしてみてください。
こういった選り好みをしてしまうと、声優を目指す上で非常に苦労します。
声優は狭き門というのも自覚しているとは思いますが、
心の何処かで
「自分だったら声優になれる」「有名になれる」
という妙な自信を持っている人もいますが、
そうであるならばがむしゃらさを前面に出して立ち向かう覚悟を持ってください。
そうやっていくと時には挫折を味わうこともあるでしょう。
ですが、そういった経験こそが磨きをかけてくれる、成長できるチャンスなのです。
逆にいままで挫折をしたことがない。
もしくは挫折を味わうほど真剣に何かに打ち込んだことがない人もいます。
こういった人はメンタルが非常に弱かったりするのです。
例えば、オーディションを受けた時、素直に結果を受け止められず、
以下のようなことを思ってしまったりします。
・今回のオーディションでは本来の実力が出せなかったのでもう一度審査をしてほしい。
・プレッシャーをかけられて自分の持てる力が全然出せなかった。
・渡された台本のキャラクターではなく、自分が得意とするキャラクターの台本なら自信があるので、それでチャレンジさせて欲しい。
こんな感じで言ってしまう人も多いと言われています。
あろうことか、オーディションでダメだったりすると、
何で自分がダメなんだ!というようなことをオーディションサイド側に言い寄る人もいれば、
インターネットに不平不満を書いたり、○○さん(演技指導してくださる方)の教え方が悪い、
というような悪口を書いたり…
そんな人が増えています。
この業界は思っている以上に狭い業界です。
だからこんなことを書くと意外とバレてしまいます。
そして次は一切呼ばれることはありません。
こういった思考ではだめなのは分かりますよね?
普通ならオーディションを受けて不合格であるならば、
自分の何がいけなかったのか?
というのを自問自答して足りなかった部分を練習したり、質問したり、
試行錯誤をしていくのが当たり前の事なんです。
ですがそれすらできない人もいる。
こういう人に聞きたい。
あなたはプロとして声優のお仕事でお金をもらおうとしているんですよね?
制作サイドが求めている、またはプロダクションが求めている物に
応えられないのなら声優になることは難しいでしょう。
あなたの声でお金をもらうということがいかに大変なことなのかを真剣に考えなければ、
プロの声優としてやっていくことは難しいでしょう。
声優業界は甘いものではないし、簡単になれるものでもありません。
そういったことを踏まえて、どんなに辛くとも、どんなに大変でも、
自分に求められるものがあるのならば、ひとつひとつのセリフに全力で魂を込める努力をしていってください。
あなたにしかできない役を生み出すことができるかで全く変わってきます。
真剣に、真面目に、声優に打ち込むことができるのであれば非常にやりがいのあるお仕事です。
これを読んでいるあなたには、この声優という職業の本質をしっかりと理解して、
魅力のある素晴らしい声優になってほしいと思っています。
まとめ
声優を目指す人向けに厳しいことを書いているとは思います。
実際に当ワークショップでも企画を開いたりしているため、
一定の基準をつけて進めているので、真剣に取り組む環境を作っていくには必要なことです。
これは私自身が声優の現場に出てその基準を見てきたからこそではあるのですが、
なにかを進めていく上で意識の高い人達で出来るよう質の高いことをしています。
是非ここで書いたことを忘れずに夢に向かって進んでいってもらえたら嬉しいです。